思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『デクストロ2接触
☆☆☆☆

妙な邦題である。原題は『under heaven's bridge』で、なんと『古事記』の『天の浮き橋』から取っているのだ。
共著者のワトスンは東京教育大学の講師だったらしく、(小松左京山田正紀あたり)日本人が書いたと言っても騙される人もいるかも知れないほど、(ワープ航法が実現した未来の)日本に関する記述は間違いが少ない。
それに貢献しているのは素晴らしい訳文も著しい。(何より、主人公の名前が高橋恵子!)
「超知性的な生体機械は仏教徒になるでしょうね。まさに純粋思考の代表ともいうべき存在だもの」
「この世に偶然などはなく、すべては互いに関連しています。死には意味があり、生には理由があるのです」
「黄昏がその道を織りなし、風がそれを運び去っていった。」
本作を読んでいて連想したのは先の日本人作家の他に、『ロシュワールド』『キャッチワールド』『二重螺旋の悪魔』など。
いちおうファーストコンタクトものだが、普通なら宇宙開拓や探査の果てに、偶然出逢うプロセスが一切なく、亜人間型の存在とコンタクトしたところから物語が始まっているのが特徴。そこからも分かるように、非常にサクサク物語が進むのが良い。それでいて人物描写が薄い、ということもない。少し前のSFはこういうところが良いのだ。
ちなみに本作のエイリアンのイメージは、巨神兵ガーゴイルの中間。
邦題のデクストロとは、舞台となる惑星の名前(正解にはデクストロ・ジェミニ2)。中盤に明らかになる惑星の運命は、中々豪快なので『ロシュワールド』を連想した次第。