思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

大田肇『「見せかけの勤勉」の正体』

「目標や基準がコロコロ変わる上司の下では、(略)目標がかえってモチベーションを引き下げる作用を及ぼしている」

「周りから「やる気を出させよう」と圧力をかければかけるほど、そうした理想的な心理状態から遠のいていく。「やる気を出せ」という言葉の裏には、「やる気を出さなければ許さない」というメッセージが隠されているからだ。」

「スポーツジムに通っている人も、(略)ジムではきついトレーニングで大汗を流すくせに、移動には体力を使いたくないし、少しの汗もかきたくないのだ。(略)やらされ感と所有感はこれだけ違うのである。やらされ感は「やる気主義」によってもたらされ、所有感は「やる気主義」を捨てるところから得られる。そして、所有感こそが自発的なモチベーションを生む。」

「「アバウト」と「不正確」とは混同しやすいが、まったく違う。アバウトとはそもそも正確さを想定していない。それに対し不正確は、正確であるべきにもかかわらず、実はそうでないことだ。それがいちばん危険だ。(略)一人ひとりの貢献度は数値化できないあいまいなものだ。しかもわが国の職場では集団作業が中心なので、個々人の成果や能力を正確に把握することができない。 にもかかわらず細かく評価しようとすると、どうしても主観やあいまいさが入る。(略)そもそも私は、人間の認知能力からいって、評価は三段階くらいが適当だと考えている。(略)上司が「やる気の足かせ」となるような評価をしないという消極的な意味で、細かいが不正確な評価より「アバウトな評価」を私は買いたい。」

「マネージャーにとってだいじなのは、「人の管理」ではなく「仕事の管理」である。(略)「仕事の管理」に必要な範囲でのみ、人を管理するべきなのである。」

「スイーパー・リーダーシップは、(略)(1)部下(フォロワー)が直面する障害を取り除き、(2)目標へ向かう動きを見定めながら、(3)成果があげられるように支援する」


『我が心の底の光』
☆☆☆★

親なし子として親戚の家に引き取られ、不遇の身の少年。
少年時代のいじめなど、『空白の叫び』のようなダークなサスペンスかと思いきや、高卒後のサラ金会社では『愚行録』や『悪党たちは千里を走る』ばりのピカレスクロマンへとシフトする。
同時に時事問題の児童虐待をモチーフにした壮絶な過去が回想される。
主人公の常にクールなところも、意外や意外、好感が持てるようになってくるのも巧い。
主人公の悪事の目的と、被害者の共通点という、ホワイダニットミッシングリンク(広義・厳密にはネタバレだが、ある程度のミステリ読みには分かるでしょ)が仕掛け(広義のトリック)となる。
ミッシングリンクの推理ほうは簡単だとおもうが、動機のほうは驚天動地というほどではないが、確かに意外な内角低め、という感じ。
それでもなお、読後感には納得感が溢れるのが、さすがは貫井ちゃんクオリティ。

我が心の底の光我が心の底の光
貫井 徳郎

双葉社 2015-01-21