思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『「食人文化」で読み解く中国人の正体』黄文雄
☆☆☆★
ヒカルランド

表紙にアオリが書いてあったりと、コンビニに売ってる五百円のアングラ本のようだが、中身はちゃんとした論文。書いていることじたいは、10ページもあれば十分な内容だが、秦漢時代からの中国の正史から食人の記録をこれでもか、と列伝的に羅列したもので、『食人の中国史』とでも名付けるべき著作である。
基本的には、ヨーロッパ型の城壁に囲まれた都市での攻防戦では、敵に包囲されると街中の食料は言うに及ばず、ネズミやミミズ、皮製品から泥、石まで食べるにいたる。それだけなら万国共通なのだろうが、行き倒れ、負傷者、さらには生きている妻子、兵士が民衆を殺すまでが(歴史的に)普通になされるのが中国人なのだ。
これは死後の世界を信じず、徹底的に即物的、現世利益的な漢人の特徴だろう。
現に、元や清など、征服王朝では、食人(人肉)による病気治療などの孝行は禁止されている(逆に、漢人王朝では表彰されているのだ)。

「楊行密が楊州城を攻め囲むこと半年、守将・秦彦の兵たちは、民衆を殺して食いながら籠城した。城内の民衆はほとんど食いつくされ、楊行密が城中に攻め込んだときには数百人しか残っていなかった」
正史に繰り返し出てくる記述はどれもこんな感じ。まさしく中国史は進歩もなく、ひたすらに同じことの繰り返しである。

「中国では、「行為」の善悪ではなく、「人物」ですでに仁、不仁が決まっているようである。「善人」は何をやってもよい、「悪人」は何をしても悪いのである。」


「忠臣・義士の事績をよくよく吟味すれば、「食人」行為のほかには目立ったことはない。いいかえれば、彼らは人を食い、あるいは人に食われたというただそれだけで歴史に名を残したのである。」

よく勝かまけるかという慣用句として「食うか食われるか」というが、文字通り中国では恨みを抱いた人を倒すと、その体を食うのである。
それは民衆も同じで、処刑された死体に群がって骨まで食い尽くすというから凄まじい。まるでSFかファンタジー物語のグールのようだ。とても日本人が理解できる人種ではない。
ちなみに先にも書いたように、支那ではなく中国としたのは、あくまでも漢人の趣向であるため。