思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

大日本サムライガール(1)』
☆☆☆☆

街頭で拡声器をもって演説する極右美少女。彼女の野望は独裁者となって日本を叩き直すこと。
一見、ラノベならではのキャッチャーな設定だけで、中身は大したことないのかと思いきや、その主張は(右か左の二択なら右翼である)私から見ても最低限破綻のないものだった。
電通の社員で大日本印刷の創業者の長男(作中ではフィクションゆえ別名だが)的な主人公が、彼女をスカウトし、彼女の理想実現のために個人事務所を立ち上げ、アイドルから政治家への道を駆け上る、というストーリー。
この巻では、主に芸能界やメディア論が問題となる。主人公たちをつぶそうとメディアバッシングを仕掛けてくるジャニーズかバーニングっぽい事務所の権力に、どう立ち向かうのか。
政治的というか、憂国的主張は私からすればまだ控えめで、シリーズを通してアイドルから、政治家になって、政治の世界の闇や既得権の問題まで描けるかどうかが鍵か。
三橋貴明氏関連の小説のほうが政治経済的主張は明確だが、エンタメとしてはこういうのもアリかも。『永遠の0』を、より対象を中高年までシフトした感じ。
ストーリーじたいは典型的な、妨害を乗り越えてのサクセスストーリーものなのでわかりやすいし。
なお、本の体裁として、B4サイズで、挿し絵はフルカラー、しおりまでついていて、本作同様に志を感じるつくり。



それにしても田中芳樹の帯推薦文、序章しか読んでないのか、私と同様に残念賞なのか、どちらにしても推薦になってないし(^_^;)


『女王』
☆☆★
講談社

女王とは邪馬台国卑弥呼のこと。連城三紀彦邪馬台国ものというより歴史ものミステリーを書く、というのがまず意外(『敗北への凱旋』は近代史だし)。
おおざっぱに言えば、邪馬台国の記憶があるという人物似ついての謎。このほかにも、記憶に混乱のある人物が複数出てくる。なにせ主人公が「自分は何才?」と訊くくらいだ。
結論から言うと、邪馬台国の謎についても、記憶喪失ものとしても、できはイマイチ。雑誌掲載時のままで、前章との重複する記述などからしても、作者もそれを自覚していたからこそ、手を入れずにお蔵入りさせておいたのではなかろうか。