思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー著/加賀山卓朗訳
☆☆☆★
早川ミステリ文庫

確かにガチガチの本格としては良くできているし、特に島田荘司本格ミステリーとしては文句のつけようがない。
ただし、驚きという点においてはもうひとつなんだよなあ…。
面白いのは、フェル博士があまりにも有名な密室講義を始めるにあたって、自らが推理小説の登場人物であることをあっさり認めるメタ的なセリフを語ることだ。ただし、残念というべきなのかはわからないが、そのメタ的構造が叙述トリックになっていたりはしない。あくまでも読者サービスと言ったところなのか。

「銃に指紋はついていなかった。雪の上に落ちて、文字通り洗い流されたからだ」
雪の上に落ちたくらいで指紋が消えるだろうか?もしかしたら当時の鑑識技術ならそうだったのかもしれないが、現代ならまず指紋検出できるだろうなあ…。