思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ゼロ・グラビティ
☆☆

原題は『GRAVITY』で、こちらのほうが、ラストにふさわしい。何故改悪的邦題のしたのかなあ…。確かに99パーセントは無重量で展開するのだが。
SFファンにも評判がいいようだし、大いに期待したのだが、がっかりした。
確かに映像表現はカメラを常に多少ともに動かし続ける長回しや宇宙ステーションが破壊されるところなど、百点で文句のつけどころがない。
が、ストーリーはただの遭難→生還(救助ではないところがポイント)で、ご都合主義なところも多い。新見は舞台が衛星軌道上なことくらい。
普通なら『アポロ13』や『タイタニック』のように事故前から始めるところを、無駄のない展開は原作のほうの『アポロ13』のようで好感がもてるのだが。
また、宇宙空間には音がないので基本的に二人が聞いている音しかなかったり(さすがに劇伴は流れるが)、エンディングが歌モノどころか無線ノイズと地道な音楽という、ひたすら渋い演出なのもいい。
基本的にはハードSFと言っていいのだが、二カ所引っかかった点がある。
一つはジョージ・クルーニーサンドラ・ブロックの手を離して彼方に消えるところ。ちゃんとロープに捕まることができたんだから、質量×運動エネルギーはもうないはず。そこからお互いそれぞれ引っ張り上げる(上下を言うのはおかしいが、感覚的に)だけだから、冒頭でハッブルを押した以上に簡単なはずなのだ。
もうひとつは、調べてないので推測まじりだが、国際、ロシア、中国の各宇宙ステーションが、いくら衛星軌道上とはいえ、肉眼で見えるような似た軌道と位置にあるのか?という問題。
逆に興味深かったのは冒頭、事故でシャトルから振り飛ばされたサンドラ・ブロックの主観映像。確かに宇宙でああなれば、死ぬまでグルグル回転し続けることになる。視覚的には目を閉じればいいのだろうが、遠心力は発生するから、とんでもなく不快な状態が死ぬまで続くのだ。本当にぞっとした場面。