『リックの量子世界』デイヴィッド・アンブローズ著/渡辺庸子訳
☆☆☆★
創元SF文庫
ほとんど期待してなかっただけに、意外と面白かった。
非日常ものか、平行世界スリップものという感じで進んで行くが、終盤になって俄然島田荘司的ミステリーになるのが良い。理論はSFのそれだが、文庫ではなく、ジャンル分けの希薄なハードカバーとかで出したほうが、先入観なく楽しめたんじゃないかなぁ…。上述したように、読後感は変わるのだが、どちらかといえば広義のミステリーとして読み始めたほうが楽しめたと思う。
某シリーズではUMAハンターとして活躍(?)した蘇我家馬子とイルカが、大阪府内で神出鬼没のこなもん屋として活躍(?)する連作短篇集。
面白いのが、各短篇の語り手は別人で、読者はそこで描かれる謎ならぬ謎の真相だけでなく、彼らの正体を推理するフーダニットとしての面もあることだ。
『豚玉のジョー』☆☆☆★
構成も、何が謎なのか分からない中で、『人間の尊敬と八〇〇メートル』のような感じの作品。
『たこ焼きのジュン』☆☆☆★
何と言っても、関西人なら誰でも知ってる超有名人(をモデルにした人物)が語り手、というオチが素晴らしい。たこ焼き論も楽しい。
『おうどんのリュウ』☆☆☆
『話がハズム』的な話、というとネタバレかな…(^_^;)最後に明かされるうどんの出汁の正体はホント??
UMAハンターを彷彿させる能力の片鱗を垣間見せてくれるファンサービスも嬉しい。
『焼きそばのケン』☆☆☆
比較的ミステリとしての難易度は低め。素焼きそばとでも言うべき馬子特性焼きそばが美味しそうだが、実際に作ったら絶対に不味そうなのも確か(^_^;)
『マルゲリータのジンペイ』☆☆☆
馬子シリーズらしからず、毒っ気は控えめ。
『豚まんのコーザブロー』☆☆☆
田中啓史らしいバカバカしいクライマックスだが、豚まんが食べたくなる作品。最後に明かされる由来は知ってました(^-^)
『ラーメンの喝瑛』☆☆☆
ラーメンの定義が面白いが、あんまり役には立たない(^_^;)語り手の正体がちょっと違った角度というのが特徴。