2012-04-20 ■ 『龍神の雨』道尾秀介 ☆☆☆☆ 新潮社取り立てて驚天動地の大トリックが使われているわけではなく、西澤保彦や貫井徳郎のような雰囲気だが、小説として充分純文学としても通用するクオリティは、あくまでも男女間の問題をメインにした連城三紀彦を越えているかもしれない。 本作ではそれぞれの人物の取り違えと善意、運命のいたずらが重なり合って、謎を作り出している。 「家族のことだけは、どんなことがあっても信じなければならない。 たとえ血が繋がっていても、いなくても。家族なら、信じなければならない。」 これがこの“小説”のテーマである。