思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ウォー・サーフ(下)』
解説にもあるように、下巻になってだいぶ読みやすくなった。
舞台が「天国」内に限定され、そこを探検することと恋人を取り返すことに目的が絞られるからだ。(こう書くと、伝統的な秘境探検もののフォーマットそのものだなぁ…)
ナノマシンの入った血液で病人を治すのも、キリスト教的なメタファーとして、ファンタジー小説でもありがちな展開。
読み終えてみても、二百数十歳の主人公の一人称(回顧談)にする意味があったのか、大いに疑問である。地の文だけじゃないけど「超○○」という表記も鬱陶しいしね。


『人面屋敷の惨劇』石持浅海
☆☆☆☆
講談社ノベルス
330ページほどなのに、なんで定型の二段組みにしないのかなあ…。表紙が女の子のイラストであることといい、ラノベ読者を狙ってるのかもしれないが、それにしては萌え絵じゃないし、そもそも内容はダークで重く、ラノベとはかけ離れているし。
『ブック・ジャングル』と同じく、あまり意味もなく屋敷に潜入するまでの事情がシャッフルされているが、要するに、連続幼児誘拐犯と思われる容疑者宅に、家族会のメンバー数人が潜入する、という話。このシャッフルは本当に無意味で、特に重要な手掛かりがあるでなし、背表紙のあらすじにまんま書いてあるし、で…。
潜入したところで、容疑者と対面したら、弾みで殺してしまい、子ども探しと犯人探しが平行して行われる。
屋敷の娘と絡めることで、警察への通報を封じたり、時間制限を設けたり、実にうまい。会話も実に読ませる。
特に終盤は氷川流介ばりのロジックで動機と機会をつぶして行くのが見どころ。
さらに、真相にはホラーそこのけの狂気が…。
ラストは希望があるのかどうか、一回転してなんだか分からない終幕に(^_^;)
本格ミステーの秀作。