思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ドッグファイト』読了

タイトルから激しい未来白兵戦争ものかと思いきや、異星を舞台にした冒険小説(とも言えないが)。
犬たちとの共生というか、テレパシーで犬をセンサーのように使う、というアイデアがタイトルの由来。そういう意味ではミステリの一発ネタに近い感じもするのだが。
とは言っても、本作は日本SF新人賞も納得の正統派SF。
犬を単なるペットや兵器として描くのではなく、しっかりと生物として描いているあたりは、ボスたる人間も加えた集合意識・群体生命としての側面も感じさせるあたりがニクイところ。
敢えてひとことで言うなら、山田正紀が書きそうなSF。これは山田正紀ファンの私からすると最大限の褒め言葉でもある。
文体も割と山田正紀の簡潔な感じに近いが、やはり簡素すぎて情感の水分が抜けているのは新人ゆえに仕方のない部分かもしれない。
最後にはファースト『ガンダム』のニュータイプにも通じる(クランなる犬と人間のテレパシーの段階でア・バオア・クーの脱出をオーバーラップさせるのに充分だが)人類の進化を持ってくるなど、センス・オブ・ワンダーや構成もしっかりしている。
犬との共生だけでも“勝ち”なのに、それに慢心せずにアイデアを練ってあるのがエライ。