思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

高度7000米 恐怖の四時間

☆☆★

ラジオ『タマフル』の「乗り物パニック映画特集」では触れられてなかったけど、日本にもこんな本格派の乗り物パニック映画があったのか?!
主役は、若き高倉健なので、60年代とか、結構古いけど。健さんの見た目的にも、『新幹線大爆破』よりもだいぶ前だ。
YS-11的なレシプロ旅客機の時代の国内線。都内で殺人事件を起こした犯人が密かに乗ったのだが、バレてしまい、やけになってハイジャックする、というベッタベタなストーリー(^^;)というより、時代の古さを考えれば、ハイジャックものの先駆というか、王道というより古典、というべきだろうか。
冒頭、空港にやってくる人たちを
テレビ番組のアナウンサーのような、軽いノリで次々に紹介していく。それが20人くらいぶん続くので、事前情報ゼロだと、何が始まるかと思うだろうが、当時、映画館に来る人は、看板くらいは見てからだろうから、この登場人物紹介が、これからひとつの飛行機に乗り合わせる人々であることくらいは誰でも予想がつくだろう。
ただこのナレーション、冒頭だけだ、後は一切出てこない上に、メインのハイジャックの犠牲者とか解決にはほとんど絡まないのが残念。さしずめ狭い機内なだけに、犯人と人質、その恋人を映すと誰かしら見切れるので、「おまえ誰やねん?!」というのの対策(言い訳)として紹介しているだけ、という感じもする。
前述のように、ハイジャックをするために乗った訳ではないので、逃亡犯が、隣の席の女性にバレるのが中盤に入るころ、それが第三者にもバレてハイジャックするのがヘタすると(映画の尺もそうだし、国内線の旅程としても、中継ぎ空港を飛び立ってからなので)半分以上経過してから、という配分。まるで海外のブロックバスターか、宮部みゆきの小説みたい。アクション娯楽に徹するなら、三分の一は短くできるね(´Д`)
タイトルの意味だが、そこそこ飛行機に詳しければ、言われてみれば分かる。国内線では、ましてやレシプロ機では、そんな高高度を飛ばない。ハイジャック犯を取り押さえる隙を作るため、7,000メートルまで上昇してから急降下し、再度急上昇して、唯一立っていた犯人を後ろまで吹っ飛ばすための軌道。
私的には、高高度まで上昇しだした時、てっきり急降下して、無重量状態にして、空中遊泳して自由に動けない犯人を、訓練したパイロットが取り押さえるのかと思ったけど(^^;)
最後は車輪が出ない、という、正しく乗り物パニック映画の教科書的な展開。今回はあれこれやって出てくるパターンだったが。
そうそう、機長の高倉健が、何かにつけて「軍隊では」だか「戦争中は」みたいなことを言うのが、古いなぁ……と時代を感じさせたところだった。

サイレンシング

☆☆

アメリカの田舎の山地に流れる川を、女性の死体が流れるオープニング。
どうやら、この山中には、若い女性を襲う殺人犯がいるらしい。主人公も、そんな娘がいて、いまだに尋ね人チラシを貼ったりしている。
別れた妻だの、微妙な関係の女性保安官(情緒不安定な弟がいたり)だのが出てくるが、要するにサイコな連続殺人犯は誰? という映画。
フーダニットとしては、ひとひねりふたひねりあるものの、全体的には凡庸。これと言って、飛び抜けた要素はなかったなぁ。
序盤から中盤に出てきたガジェットが、終盤で次々に再登場するなど、脚本の構成はよくできてはいるけど。
あと、主人公がランボーか!? というくらいタフ。序盤で胸を矢に刺されたら、自分で抜いた上に、家で針と糸で自分で縫うし、中盤には、腹を拳銃で撃たれる。それでも、毎回、ちょっとはしかめ面を見せたりするものの、ほぼ何不自由なく活動している。カバンを刺されたほうに紐をななめがけしているくらい、記録がテキトーとなのか、だれも整合性を気にしていないのか……。
タイトルの意味ももうひとつ明瞭ではない。原題も『SILENCING』なので、邦題をつけるなら、さしずめ『森は黙して語らず』とか『消息不明』とか?
敢えて良いところを挙げるなら、先の(脚本というより)構成の伏線回収と、オープニングの、森の中の川を流れる屍体を真俯瞰から撮ったシークエンスの美しさか。

レマゲン鉄橋

☆☆☆★

30分くらいは普通に観たが、少なくとも今観る意義はなさそうだったので、ミリオタ視点の場面以外は早送り。
なんと言ってチャーフィー戦車が大量に登場するのが見どころ。スカスカな空砲も多いが、何故か中盤の市街戦では発砲したら周囲の地面に衝撃波が見える(普通は逆でしょ? 開けた場所のほうが撮影上、危なくないだろうに)。また、車や柵を乗り越えたり、市街戦には戦車ファン的にも迫力あるシーンが多い。
クライマックスでは、橋や街の建物をいくつも爆撃(爆破)したりと、ホンモノのド迫力(やりすぎ?)のカットが。『秋山優香里の戦車映画講座』に詳しいが、まさしくホンモノで撮影された。ここだけでもミリオタ、アクション映画ファンには、観る価値のある映画。ドラマ的には、まあフツー(´Д`)

ジャンパー

☆☆☆★

劇場公開前に、やたら予告編を観た記憶だけはある。そして、全然観たいとは思わなかったことも。
だって、予告編からは、普通の男が瞬間移動の能力に目覚めて、地中上のどこへでも行けるようになるまでの話しだと思うじゃない? ま、そうミスリードするように作ってあるのだけど。映画としては、そうあるべきだよな、という内容になっている。
普通のアクション映画というか、マーヴェル映画のひとつ、と言われても違和感はないレベルの内容。

以下ネタバレ

予告編で隠されていたのは大きく2つ。もう一人のジャンパー存在と、能力者を捉えようとするサミュエル・ジャクソンらの勢力だ。『ドラえもん』のタイム・パトロールならぬ、空間パトロールというところか。作中ではパラディンと呼ばれている。自らはテレポートできないが、グフ・カスタムのようなヒートロッドで、ジャンパーの能力を封じる事ができる。
冒頭からしっかり描かれていた、テレポートの直後には空間こ歪みが残り、そこへ能力が飛び込めば、後を追う事が、できる。
また、移動できるものなら、自分が掴んでいれは同時にテレポートできるので、それを駆使して相手にぶつけるとか、『ジョジョ』のスタンドバトル的な展開も面白い。
なお、やや歪んだ見方として、サミュエルがヘイデンを捉えようとするので、『スターウォーズ エピソード3』のアナザーストーリーを見ているような気にもなれる。でもまあ、やっぱりサミュエルは負けちゃうんだけど。いやそもそも、サミュエルが良い目に遭う映画じたい、あるのか??(^^;)

マスク

☆☆☆☆

観るのは3回目くらい。初見はメチャクチャ面白くて、2回目は全然で、3回目は面白かった。
変身後が『トムとジェリー』ばりのノンストップ・アクションなので、変身前はかったるいかな、と思う。初見時は気にならないのだが、変身後を知っている2回目以降は、そうなる。10年後の3回目なだけに、バランスよく見られたのかも。
マスクは、趙スピードかつ物理法則を無視して物を作り出したり、銃弾すら効かない、完全無欠で、マーヴェルとかに出たら、パワーバランスを崩す事必至の超能力。
おまけに、持ち主のエゴを拡大させるので、倫理にもとるどころか、悪いことも平気でやってしまう。なにせ主人公のくせに、銀行強盗やっちゃうからね。主人公の職業は銀行マンなのに。いや、だからこそ、普段押さえつけられていた欲望が解放される、という展開。
なお、主人公の上司というか、銀行の社長のバカ息子役で、」 『トップガン マーヴェリック』のハングマン役の人が出ていたのにはびっくりした。かなり細いけど。
あとは、主人公の愛犬が、作中の性格も、芸達者ぶりにても、メチャクチャ賢いのには惚れ惚れした。
なお、四半世紀前の作品なので、CGは、現在のハリウッド・クオリティに比べたらCGであることは分かるが、スピーディなアクションと、テンポの良さで、全然気にならない。
あとは、やっぱりジム・キャリーのコメディ演技が素晴らしい。マスクをつけているのに、ちゃんとした変身前の俳優が演じる必然性がある、という店においては、バットマンロボコップの比ではない。

レッド・ホークス 追記

☆☆☆★

本作は、「事実を元にしている」と最初に出てくるが、結構脚色しているような書き方だった。パイロットが死ぬあたりか、最後に大部隊が特殊部隊を助けにきた、というのの、どちらかがウソくさいから、そのへんかなぁ。
ミリオタ的には、ガンマニアなら、メンバーそれぞれに違う銃火器を持っているあたりに注目。航空機派なら、発進シークエンスのF16がメチャ格好良く撮られているのにしびれる。キャノピーは何故かCG。
戦車ファンには、敵の拠点にエイブラムスっぽいのが見えるが、砲塔はそれらしいが、車体は箱っぽくて、最後まで動かない。がっかりしていたら、最後にまさにトルコ軍全面協力の本領発揮で、ホンモノのレオパルド1が続々登場する。
兵士たちの会話も、あからさまにプロパガンダ映画! って感じだが、むしろ清々しい。いや、そもそも、海外ではこういう愛国心高揚のためのプロパガンダ映画が作られるのが当然でしょ? むしろ日本でも作れ! と言いたい。思いつくかぎり、平成『ガメラ』くらい、というお寒い状況。映画関係者は軒並み左翼だから仕方ないんだけど(´Д`)