思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『10分間2019~タイムリープが止まらない~』
☆☆☆☆

ジェイコムの地上波の映画枠(?)でやっていたこともあって、全く期待せずに観たのだが、これが面白かった。
門真国際映画祭の舞台映像部門で門真市長賞、優秀作品賞、優秀主演女優賞ということだが、そんなのあったのね。
一応カメラが複数あって、舞台全体だけではなくアップとかもあるのだが、基本的には舞台を見ている感覚。
シーンも居酒屋の個室だけ。おまけに時間的にも10分間を繰り返すという、極めて限定された時空での出来事だ。
それでもこれだけ面白いのは、繰り返しものミステリーという「型」の強さはもちろんだが、大阪弁ならではの笑いのセンスも大きい。型として、必然的に同じ場面を何度も見せられるのが退屈になるところを、天丼ギャグとして笑いに変換している。この辺りは、客のリアクションが直接に伝わる舞台演劇ならではの演出センス。
ラストはちょっといい話に落としているところも良質な舞台、という感じ。
今年見た映画としては一番の隠れた傑作、掘り出し物、という感じ。

ジョン・ウィック パラベラム』
☆☆☆★

やっぱりキアヌの動きはモッサもっさしてるから、ビシビシ射殺していくところはいいのだが、格闘シーンはキツイ。特に今回はその比率が多いので、尚更。
全体のトーンも、さらに『マトリックス』と『ワイルドスピード』みたいな乱暴な感じに。特に前者はクライマックスバトルの前に「a lot of guns」というモロのパロディまである(^_^;)
特にバイクでのアクションはどうせCGでしょ?(´д`)的な悪い面がモロに出ている悪手。
ハル・ベリーが出てくるあたりが『ワイルドスピード』っぽく感じた。彼女が犬を二匹飼っていて、アクションシーンでは式神かオプションかスタンドか、という感じで活躍する。アクションに入る前に、ボスが犬を射って、犬が倒れる。ようやく最近の映画でも犬を殺すシーンを作ってくれたか?! と快哉を叫んだが、実は防弾ベストで、無傷でした、というオチ(´д`) 人間は犬畜生のように殺しておいて、動物は傷もつけない、という矛盾に映画関係者(観客も含む)は気付いていないのかねぇ・・・。とはいえ、馬キック(どうせCGでしょ?(´д`))で暗殺者を次々蹴っ飛ばさせるのは面白かったが(でも半分「なんやこれ」的な意味で)。
本作で評価したいのはスタントチーム。キアヌがもったりしているだけに、相手や、それ以外の暗殺シーンでの雑魚キャラのキレのある動きが良くも悪くも目立つ結果に。それと合わせて殺傷カットの特殊効果は素晴らしい。被弾した時の血飛沫は相変わらず(良い)だが、今回増えた刀剣を刺された時のものが見どころだ。
特に、キアヌが敵の目をナイフで刺すカットは、相手の顔がアップで写っているので、どこでカットが切り替わるのかと思ったら、そのまま刺さるではないか。これだけでも本作を観る価値があるかも。特に特殊効果好きには。
今回の敵は、普段は寿司職人だが、実は刀を使う暗殺者、という『キル・ビル』みたいな設定。大葉健一? かと思ったが、たまに喋る日本語が下手くそすぎるので、クレジットを観たら、なんと(『キックボクサー』)マーク・ダカスコスだった。
ストーリーはどうでも良くなるくらいテキトー(B級感満載)だが、一番納得行かなかったのは、クライマックスバトルの前、裁定者なる女が本部に電話をかけるのを傍観しているところ。電話する前に即射殺でしょ? まあ、最後まで観ると、実はホテル支配人はキアヌを(見)殺してボスに再度認められる目論見があったからだと推測できるのだが・・・。

トブルク戦線

☆☆★

戦車映画特集ということで、あまり聞いたことないなぁとおもいつつ、ダメ元的に観てみた。見た目の印象だけからすると、70年代あたり?
史実のトブルク攻略エピソードを元にしてはいるが、逆にそれ以外に主人公のドイツ部隊への偽装からしてそうだし、途中出てくるスパイとか、むしろどこまで事実なのか怪しいくらいの許さというか、おおらかな感じの娯楽映画だ(^^;)
冒頭に、作戦の道案内に必要だからと、主人公を敵地から奪還する作戦が描かれるのも特殊部隊もの映画らしい。『エクスペンダブルズ』の2か3もそうだったねぇ。
特に中盤以降は『ロンメル戦車軍団』(うろ覚えタイトル)? というくらい、既視感のある場面。
純粋に、本作を観る価値があったと感じたのは、火炎放射器の火炎をほぼ正面から捉えたショットくらい。あとは、要塞からの戦艦の主砲クラスの大砲の射撃。ちょっと後退(駐退)しすぎかなとは思ったけど、
ちなみに、戦車はほぼパットンかチャーフィーのなんちゃって大戦中戦車。全然期待してなかったので、どうでもいいけど。

ガンダムMSイグルー重力戦線(2)

☆☆☆★

再見。どうも欠点ばかり目につくなぁ……(´Д`)
クライマックスの戦車対ザクのバトルシーンになれば、見所はあるのだが。
ってことで、まず良い点から。
パーツと線の多いデザインである連邦61式戦車が画面を前後左右にグイグイ走り回るところ。これは作画がでは無理なところだが、構図や動きにメリハリがないため、迫力という面で、セルアニメ寄りなルックの『ガルパン』に負けているのが残念。
サウンドは、ザクが倒れるカットでの、鉄の軋むような音が良かった。ちょっと『パト1』クライマックスで、イングラムのワイヤーに絡め取られた零式の音を連想した。
意外にも、死神が良かった。リアルCGでの美女の表現はハードルが高いのだが、お化けという設定は、CGの不気味の谷を逆用した、コロンブスの卵的活用法と言える。絶対たまたまだと思うけど(^^;)
良くも悪くもない中立的レビューとしては、ストーリーが、松本零士『ザ・コックピット』のような感じで、『ガンダム』の世界観としては独特。
最後は欠点。
なんといっても、フルCGにする必要があったのか? という点。人物のレンダリングは頑張っているのだが、完全に白人なのに、日本語の口パクなところが違和感バリバリ。英語で、日本語字幕にするか、英語の、口パクで日本語セリフにしてほしかった。……というか、なんか一周回って訳のわからんことになってる。映画における言語問題ってなんだろうと考えざるをえない(^^;)
致命的なのは動きも顔の表情も、演技がアニメそのものなこと。せめて実写的な落ち着いた演技なら、だいぶましだったのに。モーションキャプチャーの俳優じたいがオーバーアクションだったのかもしれないが、そこは演技指導しろよ……(´Д`)
反対に、いっそアニメ版『ザ・コックピット』のガンダム版という感じで、手書きアニメで良かったと思うけどなぁ……。少なくとも、この内容なら。

ミドルマネジメントの正解

作佐部孝哉『ミドルマネジメントの正解』を読む

印象に残ったところ

ドラッカーが「企業文化は戦略に勝る」

「目先の効率やコストパフォーマンスだけを重視するのではなく、メンバーが遊び心を持てるかを大事にしていきましょう。」

「話をきいたときはなるほどと思うものの、なぜその答えに辿り着いたのかといった過程を共有していないので記憶から消えてしまう。やはり、自分で考えてその答えにたどり着くといったプロセスが必要」

「任せすぎてもいけない、細かすぎてもいけない(略)メンバーに指示するのではなく、相談をすることです。」

「・社会規範や社内ルール
 ・人としての最低限のルール(同僚の悪口を言わない、人をだましたりしない等)
に抵触しないかぎりは、極力、メンバーの判断に任せています。」

「会社都合でスキルを磨かせるのではなく、メンバー自らやりたいことを見つけ、その道に進むための後押しをしていく」

「他人に何かを期待するのはやめましょう。他人を変えることはできません。(略)ストレスの多くは、期待との乖離から生まれます。
 期待した状況と違うと感じるから、不満を感じるのです。裏切られたと感じるのも、その人を信用、期待しすぎた自分のせいでもあるのです。」

「ケント・M・キースの逆説の10箇条(略)人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。」

イスラエル機甲戦

☆☆☆★

いわゆる中東戦争の地上戦を、ミリタリー雑誌の別冊らしく、ふんだんな各種兵器の写真を全面に出して構成した本。土のつきかたや、エッジのこすれ具合がよくわかる写真が満載。撃破された戦車も多数。
それぞれの戦争について、参加した指揮官のインタビューを1人ずつ載せている。特に戦車目線での戦争、戦闘の様子がよく分かる反面、戦局の推移はよく分からない。以前に数冊の戦史を読んでいなければ、単なる戦場ドキュメントにしか思えなかっただろう。
本書のポイントは、さすがに戦闘中のものはないものの、戦闘があった後の、戦車の残骸のある戦場写真や、戦闘の合間の写真が多数掲載されていることだ。まさに、ジオラマのお手本としても非常に役立つ。また、車体各部のヤレ具合も参考になる。

ザ・ウォール

☆☆☆

ザ・ウォーク』とごっちゃになるし(^^;)、タイトルからして突然周囲を壁に取り囲まれるSFかと思ってしまうのだが、全然違う。
アメリカ・イラク戦争での実話を元にした、冒頭から、バディのうち1人が狙撃され、主人公も負傷する。そこへ無線から声が聞こえてきて……。その後、敵との探り合いの会話が8割がたである。
タイトルは『ザ・スナイパー』でもいいくらいだが、すでにありそうだから変えたのかな?
荒木飛呂彦が描きそうな、一見駄話風の会話から、相手の正体を探る心理戦。死んだと思っていた相棒の復活、そして敵の正体は?
ラストのミステリー的なオチは、アメリカ特殊部隊が中東のジャングルに墜落した映画を思い出した。