思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『プロジェクトA』

☆☆☆★
ジャッキー映画の最高傑作と言われる本作。久しぶりに再見。絶賛評価を聞いたあとなので、期待しすぎたせいか、がっかり感がほぼ全編に漂う感じだった。
手放しで楽しかったのは、中盤、ヒロイン(というには彩りのおまけ程度で、ストーリー本筋には全く絡まない)との逃避行。裏路地を自転車などを使ったアクション、そのクライマックスの時計塔からの落下スタント。ただ、ほぼ真横から撮る構図で、真俯瞰からよりも怖くなく、凄さが伝わりにくくなっていたのが残念。
プロジェクトAって、海賊のアジトへの侵入作戦のことだったんだね(・。・)

『天竺熱風録(6)』伊藤勢
☆☆☆☆
白泉社

伝奇ものとしては盛り上がりに欠ける幕引きだった。いちおうラスボスも怪しの物であったが、彼らの出自や背景は語られぬまま。
本作は、アクションものとしては異様に長いエピローグというか、戦いが終結してからもなかなか終わらない。まるで『指輪物語』のようだ。
巻末に収録されている作者たちの発言によれば、あくまでも史実をベースにして、王玄策という人物を描く、伝奇ならぬ伝記ものだったのだ。
特にこの最終巻では、スクリーントーンも控えめだし、淡々とストーリーが展開する印象。
面白いのは、序盤に登場する小柄な、オークみたいな王のデザイン。
エピローグで急に浮上してくる仏教談義も、作者らしいと見るか、脱線(暴走)と見るか……。
何より、作者のファンとしては、巻末の対談で、作者の姿(写真)が拝めたのがプレゼントだ。

『今さら聞けない!? プラモデル制作Q&A』森慎二
☆☆☆★
大日本絵画

まず、60年代の自費出版か?というカバーデザインには多いにがっかりさせられる。
100のトピックを1ページずつ解説するもので、いちおう森氏が全文書き下ろしているのだろうが、内容的にはどこかで大日本絵画模型誌に書いてあることばかり。数少ないトピックは、ラストのプラモ価格と縮尺くらい。そういう榜論以外の本論としては、小エッチングパーツの塗りかた(ランナーについたままヤスリがけとプラサフ)くらいかな。

追記
『絶対必見! SF映画200』
本シリーズのムックの特徴として、紙が分厚くて開きにくいのはなんとかしてほしい( ´Д`)重いし。

個人的観たいメモ

○『エクストロ』
○『スピーシーズ ネオ』(『スピーシーズ』とは無関係だったのか)
○『タイムトラベラーズ

『エイリアン コヴェナント』☆☆☆★

続編ではあるが、起こっていること(構成)は前作『プロメテウス』とほぼ同じ。舞台裏を想像するに、『エイリアン』シリーズであることをラストまで隠す意図があったためエイリアンを出せなかった前作と違って、序盤からエイリアンを出していたらこうなった、という感じ。
巷間、言われている通り、人間たちはバカばかりなので、超リアルで金をかけまくったドリフ、あるいはダウンタウン松本の不条理コントを観るつもりで観ると楽しめる(笑える)かもしれない。ホラー的な怖さはなが、グロ描写の怖さは少しある。エイリアン自体の謎めいた不気味さのない、普通のモンスター映画といえる。

以下、ネタバレ

本作に副題をつけるなら『愚かな人間と賢い人造人間』という感じ。
序盤に出てくる白エイリアンは胞子を吸い込むだけで寄生できる進化形だが、後半には出てこない。また、何日かに分けて観たので、レビュー動画で指摘されるまで気づかなかったが、黒エイリアンにしても、寄生してから誕生そして成人(成虫?)になるまでが数分単位、というお約束の画を見せる意図しか感じられない。そもそも成長のエネルギーをどこから得ているのか(あ、人間の肉?)。
デイヴィッドがエイリアンを作ろうとした目的もよく分からない。何でもいいから、人間にできる生命の創造(子孫づくり)をしてみたくて、なんとかできた子供が、こんな生き物(しかできなかった)だった、ということなのか。
これが『エイリアン』に続くとなると、怖くもなんともない(特にこれをプリークエルとして、このあとに『エイリアン』を初見しようとしている人がいるとしたら……)。ホラーではなく、モンスター/パニック映画としての怖さだけになってしまうと思うのだが……。謎の存在に説明をつけたい、というのは分かるが、これなら、『エイリアンVSプレデター』での、ゴキブリみたいな生態系のエイリアンのほうがまだましだ。
実際に本作を観るまで、雑誌の(ネタバレ)記事を見て、今度の惑星には人類との混血で意思疏通の可能性がある白エイリアンと黒エイリアンとの、危うい3すくみバトルだとちょっと期待していたのに……。ことに白エイリアンの無駄遣い感は半端じゃない。

『絶対必見! SF映画200』studio28責任編集
☆☆☆☆
洋泉社

SF映画のガイドブックだが、その情報量と質が実に濃い。タイトルこそ200となっているが、各ジャンルごとの概論でタイトルだけ紹介されている作品も含めると、その数倍になるだろう。作品別の解説も見開き2ページだが、文字サイズはキャプションではない、文章としては限界まで小さいので、情報量は多め。
たぶん筋金入りのSF映画オタクでもない限りは知らない作品が多いだろうから、初心者から中級者(って何だ?(^_^;))までは必携の一冊。

個人的観たいメモ

○『ジョン・カーター』アニメ版のテストフィルム
○『エウロパ
○『人類はなぜUFOと遭遇するのか』
○『神々のたそがれ』
○『ザ・ベイ』
○『ミラクル・マイルズ』
○『ファイナル・アワーズ

『天気の子』☆☆★

とにもかくにも、劇中、4、5回もある、歌が流れる度に「もうえーわ! 鬱陶しい!」と叫びたくなった。
評判で聞いていた通り、『君の名は』以前までの新海誠らしい、セカイ系に戻った感じ。ただ、クライマックス前に線路を走るシーンで、周りからの冷めた声が聞こえるあたり、いちおう自覚はしているようだ。
とりあえず、長すぎる。てっきりひなが文字通り昇天したら終わりだと思って、ひなを探そうとするのがエピローグだと思っていたら、全然終わらない(@_@;)鳥居をくぐっても何も起きないで終わりだと思ったら終わらない(@_@;)
やっと出会って空から落ちるところ、これで二人が地面に激突して木っ端微塵になり、弟あたりが指輪を拾う、という結末を(絶対にないと分かりつつ)妄想したり。
そもそも、大雨の被害で何人が亡くなっているのか?人的被害だけでなく、経済的被害をほぼ無視しているあたりがセカイ系たる証だ。
終わってみれば、本作はハッピーエンド版の『君の名は』であり、『ラピュタ』と『ポニョ』を合わせたような映画といえる。特に水害の中で、世界の迷惑と被害を無視して、二人だけが幸せであればいい、というあたりが。何度もある逃亡成功シーンは、よくある映画的な御都合主義として百歩譲るとしても。
マチュア声優(俳優)の器用は、監督は声優の演技なんて作品の良し悪しには無関係だと思っているとしか思えない。音響監督の本音が聴いてみたいなぁ……。主人公のバイト先の姪がキャラとしては唯一、偏見なく好きなキャラであった。
キャラデザインもちょっとちぐはぐで、リーゼント刑事も、出オチのキャラかと思いきや、最後までそこそこの出番がある。
映像設計として、ちょいちょい極端なズームアウトがあるのが気になった。もっとも主人公の心情に同化させる必要のある、クライマックスに鳥居への階段を上るシーンなんかもその典型。『クレしん 大人帝国』じゃないけど、主人公を追いかけるカメラワークにすべき場面でしょ?
あと、気象アドバイザーがいるようだが、終盤で雪が降るのだが、科学的には雹が正しいのでは?
そもそも、主人公が北海道から家出をし、困難に耐えてまで東京にとどまる理由が、最初は分からないから共感できないし、終盤で明かされても、そんなイタイ理由?とやっぱり共感できない。十歳以下の子供ならともかく……。
また、SF好きとしては、何ヵ月も(エピローグも含めると何年も)雨が降る理由にイマイチ納得できないものが。これが惑星の構造そのものが違う異世界ものなら良いのだが……。