思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『潜伏者』折原一
☆☆☆

連続少女失踪事件とそれを追うノンフィクション・ライター、その犯人の主観で描かれたミステリー。
本筋とは直接関係ないが、作中で、屍体を公園の砂場に埋める場面がある。80センチ掘るような事が書いてあるが、砂場の深さはそんなにない。実際に掘ったから分かる( ´Д`)だいたい20~30センチしかないので、屍体を埋めたりできないのだ。
叙述トリックの折原だけあって、本作にも作中作として小説が出てくる。問題なのは、極論として、作中作を全て読み飛ばしても問題ないことだ。
ただし、本作のメイントリックはなかなか効果的で、違ったかたちでまとめたほうが、それをより活かせたのではないか。タイトルの意味も意味深に感じて来る。

『ドラゴン・コップス』
☆☆☆

香港映画で、カンフーなら「ドラゴン」って安直なネーミング。
CGを多用した、コメディ刑事もの。
連続殺人事件を追う刑事3人組の一人がジェット・リーである。
ギャグははっきり行って滑ってるが、アクションはまずまず。<ウォン・フェイホン>シリーズのオマージュのようなシーンも色々ある。何しろ、ジェットの役名が同じフェイホンだからね(^_^;)
おまけに、新旧フェイホンの対決というサービス(明らかに本筋とは無関係)まである。
一応ミステリー的な犯人探しもあるが、犯人はチャウ・シンチー映画でおなじみのあの人物。確かに意外っちゃあ意外だわ(´д`)それまでのCGで暗雲が嗤う演出は何だったんだ。



魔法少女まどか・マギカ 新編 叛逆の物語』
☆☆☆☆
新編とあるが、テレビシリーズは見ていないが、同等の映画版である『前・後編』と対になる作品といえよう。
エピローグに当たる部分が少々長く、あっさり終わったほうが良かったのでは?それがなければスッキリして☆☆☆☆★くらいの評価だったのに。流石に『前・後編』ほどではないが……。あくまでもそれを追補するもので、単独では存在し得ない作品(当たり前だが)。

以下、ネタバレ

エピローグがなければ、『前・後編』が「神の誕生」、本作が「悪魔の誕生」という綺麗な対の関係になったのに。
さらに、本作の後に『前・後編』が来る、ウロボロス的な可能性もあったのに……。

魔法少女リリカルなのは デトネーション』☆☆

すいません、体調の関係もあって、前半は寝てました(^_^;)
後半は、まるで『聖闘士星矢』のハーデス編みたい。やたら派手な攻撃と、生身の人間の不死身さ加減。攻撃もインフレで、とにかく画面を引いて俯瞰かアオリのどちらかで、さぞかしレイアウトは大変だったろうなぁ……( ´Д`)
死んだと思ったら死んでない、はもちろん、「実は○○でした」的などんでん返しのためのどんでん返しは、週刊連載のような『ポニョ』のような、先も後も考えずに書いて行ったよう。
所長も、何の前ふりなく登場した感じ。何より、所長は左遷されなければ、あのアンドロイドを何に使うつもりだったんだろう?このへんからも、どんでん返しのためのその場の思い付きで、前後編全体の整合性や手札の出し方を調整せずに書き進めたことが疑われる。
クライマックスは、何故か押井『甲殻機動隊』や『ターミネーター』『007 Re:サイボーグ』になるのはなんでしょ( ´Д`)
そもそも、舞台を地球にする必要あったか?なのはたちがあちらの惑星に迷い込む、映画『ドラえもん』スタイルで良かったのでは?
ラストは、無意味に時間を駆け足したようで、そこまで行くなら、イリスが刑期を終えて「ただいま」と微笑むカットにすれば良かったんじゃないかなぁ……。
唯一良かったのは、イリスが、友達を騙している時の内心を独白しているシーン(天の邪鬼だなぁ……私は)。詐欺師ってのはこうして人を騙すんだ、という教訓になるなぁ……。


モデルグラフィックス 2018年12月号』☆☆☆☆

模型誌中では最後発となる「タミヤMM50周年」特集。記事中で断っている通り、姉妹誌で先発した『AM』の特集を補完する、重複のないもの。敢えて重複していると言えばフィギュアに注目している点だが、これに限らず金型製作という視点に焦点を合わせているところが(よい意味で)マニアック。
ただ、何故か中村桜の総火演レポートが『AM』誌と丸かぶり……( ´Д`)

ジョジョリオン(15)』荒木飛呂彦
☆☆☆★
ロカカカの実(の成る枝)を探すため、専門家たる男を探す、という引き延ばし感丸出しのプロットはいかがかと思うが……。
ドロミテは感電して岩人間になった?かどうかはともかく、支那の刑ばりに四肢がない、青年誌ならではの造形が奮っている。そのスタンド能力は、同じく岩人間の夜露と似て、対象物に向かってまっすぐ引き寄せるというもの。ドロミテのほうは、引き寄せるものは物ではなく人間。それも、体液が付着しただけで生きながらにして即ゾンビ化(ってことは死ぬってことだよね?これって実はかなり凶悪な能力である)して、ターゲットに真っ直ぐ向かう。ゾンビがバトンリレー式に入れ替わるあたりはアヌビス神を思わせるなど、バステト神やグリーン・デイなんかとのハイブリッドした(作者はもう忘れてそうだが)、実は最強クラスかも。遠隔自動追尾型で本体は安泰だし。

『乱歩城 人間椅子の国』黒史郎
☆☆☆
角川ホラー文庫

乱歩の作品を元にしたパスティーシュとは、作家にとっても出版社にとっても、よほど食指をそそられるものらしい。本作もそのひとつ。
文体や描写もそれっぽくしているが、文体は乱歩というより小栗虫太郎寄り。
登場人物は、はっきり言ってラノベレベル。明智小五郎が、明智傷なるドS女になっていたり、乱歩の作品を元にしたあだ名がついていたり。
トリックにしても、色々と現実的にはあり得ないもの(例えば、天井板の穴の内部は、たとえ双眼鏡を用いても床下からは見えまい)。
探偵小説的なホラーとして、表題作だけはそれなりに読めたが。
文体的にも、「気違い」と書くべきところを「キ印」と書くなど、色んな意味で甘いんだなぁ……。

『人生を変える 修造思考!』松岡修造
☆☆☆★

暑苦しくて好きになれなかったが、テレビ授業を見て、島本節と同じく、理屈があると分かって興味が出た。一言で言うと、「常に全力!」テニスの試合は言うまでもなく、『食いしん坊万歳!』の収録から、普段の食事、映画鑑賞そして寝る際にも。
ぜひとも島本和彦先生と対談してほしいなぁ……。

「喜んでください。緊張や不安は、自分自身が本気で頑張ろうと思っているときにやって来るもの」

「講演会などに出かけて、話を聞くとき(略)退屈だと思ったら、「どこが?」と探し始めます。(略)マイナスのイメージをそのまま受け入れずに、その感情を抱いた原因を考えてみると自分に役立つものが見えてくる」

茂木健一郎先生は「脳は苦しんで何かを達成する度に強くなる」とおっしゃっています。自分の能力ギリギリの難易度や時間を決めて、それを乗り越えたときに脳は喜んで、学習効果が上がるそうです。」